第2章 見上げる白
「ちょっと待って!これ、僕のせい?急に前に来たのは悪かったけどさぁ、尻もちくらいで泣く!?」
女は慌てた素振りで目元を拭うがそれでも泣いていた事実は隠しきれていない。
しかし、次の瞬間には土の上に正座で三つ指ついている。
女はほとんど悪くないのに丁寧に謝罪を入れてくる。
(うわー、女の子に土下座させちゃったー)
しかし、「あの…」と言葉が続いたのに反応した。
女は神妙な面持ちで、何やら重大なことを打ち明けるのではないかと感じた五条は注目する。
なのに、聞こえてきた言葉は「南蛮の方なのに日ノ本言葉がお上手なのですね」と予想だにしないもので、五条「は?」と間抜けな声を上げてしまった。
(え、なんばんってチキン南蛮の南蛮?日ノ本言葉?)
五条が脳内で軽く混乱している間も関心したように「今は南蛮の方もこんなにも流暢に日ノ本言葉を話すのですね、すごい時代です…」と呟いたり、終いには「もっと簡単な言葉じゃないといけませんね…」なんて言っている。
(え、まさか僕のこと外国人だと思ってる!?)
「いや!言葉はわかってる!わかんないのは君の思考!“南蛮の方”って何?」
女はキョトンとする。
あどけない表情はかなり幼く見える。
「以前、南蛮の方は青い目だと聞いたことがありまして…お会いするのは初めてですが」
それなのに口を開けば時代錯誤なことを言う。
「生粋の日本人だよ!」
そうツッコんでも釈然とはしてないようだった。
(なんなんだ?コイツ。いいとこ17、8歳くらいなのに妙に古臭い…受肉体か?いや、呪力が全く感じられない。むしろ…)
一番の問題はこんな目の前にいるというのに、なおも六眼は彼女を捉えない。
目で見えているのに、眼で追えない。
こんなことは初めてだった。
(なんか、超気持ち悪い!)
しかし、悪いものではないということが直感でわかってしまうからタチが悪い。
「てか、何で逃げたの?」
そう訊けば、「とても信じがたい話なのですが…」と至って真面目に語り出す。
「それ、僕だよ」
タネ明かししても信じる様子がない。
目の前で起きている現象を呪術や術式に繋げる思考回路がない。
そんな人間がどうしてあんなところにいたのか興味はある。
そうして先程よろしくひらひら手を振ったところで理解が追いついたのか大きな瞳を更に大きくしてパチパチと瞬きをしていた。
