第4章 会えば白
「刹那が特級秘匿物になるってんなら、見つけてきた僕に所有権あるんじゃないの?ほら、呪具とかだって個人保管なんてザラでしょ?」
内に秘めたる牙を覆い隠すように普段どおりの飄々とした、それでいて非礼をものともしない物言いに夜蛾が「悟!」と止めに入るが、五条はそれを手を上げて制した。
「まぁ、僕もそこまで非道じゃないからさ、刹那に選ばせるってので全然いいよ」
そういうと五条は刹那の方に向き直る。
その表情はいつもの余裕綽々の笑みが貼り付いている。
「刹那さぁ、こんなところで何不自由ない生活で良いわけ?君ってさぁ、病的なまでの世話焼きじゃん?他人の世話焼いてないと生きていけない人間でしょ」
でなければ、ほぼ無理矢理連れてこられた散らかった部屋を片付け、縁もゆかりも無い男の下着など洗わないだろう。
しかも、あんなにも満足げな表情まで浮かべて。
(あの表情は思い出すだけで笑える)
「そこんとこ僕はさ、年中忙しいし、やれば出来るけどやる気はないし、たぶん君が片付けたさっきの部屋も秒で元通りだよ」
誰にも口を挟ませない、例えそれが刹那本人であっても。
余計な情報が入らないように、本人の判断がブレないうちに。
「実際さ、さっきのめちゃくちゃ助かったんだよねー。まぁ、パンツ手洗いはもう勘弁だけど(笑)」
自分がやっていることが天元と何ら変わらないっていうことは五条だって自覚はある。
しかし、それでようやく同じ土俵だ。
だからこそ、意味がある。
同じ土俵に立って、それでも刹那に選ばせる。
「だからさ、僕んとこにしておいたら?」
(わかるだろ?どっちの方がより自分が満たされるか)
刹那を見る五条はいつものようにニヤけているのに瞳の奥だけは笑っていなかった。
その瞳を刹那は不思議そうにしばらく見つめていた。
続く沈黙にその場にいる者は刹那の言葉が紡がれるのをただ彼女を見つめながら待っていた。
それに気づいたのか刹那はハッと息を吸った。
そして、
「確かに、あの部屋はひどい…かもしれませんね…」
そうボソリと呟いた。
五条は微かに拳を握りしめた。