第4章 会えば白
その声に逸早く反応したのは刹那だった。
声のした方を素早く振り返った。
視線の先にいたのは、おおよそ人とは思えないような異形の者だった。
しかし、その異形は刹那と目が合うと
「久しいな、刹那」
と優しく穏やかな声で語りかけていた。
それだけで刹那は弾かれるように五条の元からそちらに駆け出していた。
あまりに一瞬のことだったため、五条は引き止めることすらできなかった。
「天元様!」
刹那は天元と思われる異形の元へ駆け寄ると、何の躊躇いもなくその手を取り、嬉しそうに微笑んだ。
「分かるかい?」
天元がそう訊けば、
「えぇ、何もお変わりありません」
語尾が少しだけ揺れた。
瞳が少しだけ潤んでいる。
姿形が変わろうとも、穏やかで優しい声や眼差し、雰囲気で刹那にはわかるものがあるのだろう。
そんな刹那の様子に五条は小さく舌打ちをしたが、黙って事の成り行きに睨みを効かせる。
「今まで大変だっただろう。もう八百比丘尼は閉じたのか?」
「はい、ようやく。少し前にコチラに戻ってきました」
「そうか。たまに高専を訪れていたのか?」
「はい。どうしても満月の夜は気持ちが落ち着かず、少しでも彼らの近くにいたくて…」
「入ってくればいいものを。いつでも戻っておいでと言っていただろう?」
「はい。でも、自分から出ていったものを出戻るのも気が引けて…」
「私とお前の間でそんなことを気にする必要もないだろうに。この姿になってからはお前の気配がわからなくなってしまってね。お前が五条悟と接触してくれて良かった。彼を通してお前の存在に触れることができた。またこうして会えて良かったよ」
「はい、私もお会いできて嬉しいです!」
完全に二人の世界で行われるやり取りは教師と生徒のような、母と子のような、姉と妹のような、友人同士のような、何とも言えない距離感で、それは100年共に過ごしたというのを裏付けているようだった。
しかし、五条はその会話の端々から情報は溢さず読み取る。
(満月…)
(『彼ら』は九相図のことか…?)
(天元でも刹那の気配がわからない?僕と接触して刹那の気配を感じたって?)
読み取った情報を脳内で処理する。
これからこの会話がどんな流れになっても対処できるように。