第4章 会えば白
昇降機が重々しく動きを止め、扉が開くと薄暗いトンネルのような通路が伸び、その先に通路の出口とも薨星宮の入口とも言える一際明るく輝く光が見えた。
夜蛾に続いて刹那、五条が降りた。
「八百比丘尼殿、こちらへ」
夜蛾は少し進んだ先で立ち止まり、何かを避けるように自分の横を通るよう案内した。
刹那は不思議に思い、夜蛾の横を通る際に夜蛾の屈強な身体のその向こうに何があるのかと視線を走らせ、そして息を飲んだ。
「あの…あれは…?」
隠すように夜蛾の身体の後ろに広がっていたのは床に飛び散る大量の血の跡だった。
「何年も前のものです。天元様に差し障りはありません」
そんな夜蛾の説明に刹那はホッと息をついたが、五条の表情は歪み、一際拳に力が入ったのは見逃さなかった。
それでも五条は何も言わないので、刹那も何も訊かずに既に歩き始めている夜蛾に続いて先にある光に向かった。
通路の出口を潜るとそこはどこまでも広がる白い空間だった。
上下左右全てが白く、平衡感覚がおかしくなりそうだ。
後ろに通路へ続く出入り口がなければ方向もわからなくなるだろう。
145年前に来た場所とはあまりに似ても似つかない空間に刹那は眉を顰めた。
「夜蛾さん、ここは本当に薨星宮なのですか?」
思わずそう口にしてしまうほどだった。
「いえ、これは薨星宮本来の姿ではありません。これは…悟。お前が警戒されているんじゃないか?」
「はぁー?なんで僕?夜蛾学長の方がよっぽど警戒される見た目でしょーが」
いつもの軽口なのにどこか棘があるような語調に五条の不機嫌が滲んでいる。
「で、なーんもないけど、天元サマは?」
「わからん。危険がないとわかれば何かしらのアクションがあるかもしれんが…」
「へー」
五条は興味なさそうに声を出すと、口の横に手を当てた。
「天元サマー、会いたがってた八百比丘尼ですよー。いないなら連れて帰りますからー」
何も無い空間めがけて声を上げたが、特に何も返事はなかった。
「はい、天元サマはいないってことでー。刹那、帰ろ帰ろ」
五条は刹那の肩に手を添えて通路への出入り口の方へ身体を回れ右させ、一緒に歩き出そうとした時だった。
「待て」
そこにいる誰のものでもない声がした。