第4章 会えば白
八百比丘尼の名を否定しない刹那に五条から表情が消えた。
もちろん、五条も八百比丘尼の伝承を知らないわけではない。
ただ、月を見上げて大泣きする刹那が、あっけらかんとしてド天然な刹那が、人のパンツを洗って満足そうに笑う刹那が、800年だか1000年だかを生き永らえる人物とはなかなか一致させることができない。
「天元様から伺いました」
夜蛾の言葉に五条は自らの思考から意識が戻り、刹那は上擦る声で「天元様が…?」と目を見開いた。
刹那の見開かれた目には光が入り、輝かせているところを見ると一定の関係性があり、しかも信頼を寄せていることが嫌でもわかる。
五条はというと、その名を聞けば7年前の記憶が蘇るので渋い顔をする。
「天元様がお会いしたがっていました」
そう夜蛾が付け加えれば、刹那が嬉しそうに微笑むものだから五条はますます面白くない。
「はい!私もお会いしたいです!」
「では、すぐにでもお連れします」
話がトントン拍子に進むのもどこか妙だ。
「はいはーい、僕も一緒に行くー」
刹那一人を天元のところに向かわせるのは何となく嫌な気がして即座に手を挙げていた。
「薨星宮はそう易易と立ち入れる場所じゃない」
弁えろと言った風の夜蛾に五条も引かない。
「刹那拾ったのは僕なんだから天元サマも一言お礼言いたいと思うけど?」
五条は伺うように上目遣いで夜蛾を見るが、その視線には圧が乗る。
夜蛾は口の中で「ガッデム!」と呟くとしぶしぶ了承した。
「そうと決まればさっさと行こうか。あんまり遅くなると授業に間に合わなくなる」
率先して五条が立ち上がると夜蛾も立ち上がりドアへ向かう。
夜蛾がドアを開けたと同時に五条は夜蛾をドンと廊下へ突き出し、ドアを閉めて結界を張った。
「悟!」と声を荒らげてドアをドンドンと叩く夜蛾に「3分だけ刹那と話させて〜」と告げると、あまりの一瞬の出来事に目を丸くしている刹那に向き直る。
「刹那、天元サマとの関係、端的に教えて」
五条の声は出会ってから今までで一番低く響いた。