第4章 会えば白
応接室の扉を開ければ、ドアに背を向ける形ですわっていた夜蛾が立ち上がり、刹那に向かって一礼した。
電話で『その方』と呼んでいただけあり、見た目の脳筋にそぐわぬ礼節に五条は不可思議すぎて顔が歪んだ。
刹那も戸惑ったようであったが一拍遅れて礼をした。
刹那が頭を上げると「こちらへお掛けください」と夜蛾が上座へ通すので五条もそちらに座ろうとすると、「お前はこっちだ」と夜蛾に首根っこを掴まれ、夜蛾の隣に押し付けるように座らされた。
「呪術高専東京校の学長、夜蛾と申します。まずはうちの五条の失礼をお詫びします」
そして、再度深々と礼をした。
「いやいや、夜蛾さん、どうして僕が失礼した前提で謝ってるの?」
「お前が面白いもの拾った!で何もしてない訳がないだろうが」
「そんなことないよね!?刹那?」
いきなり話を振られて刹那はビクリと肩を揺らしたが、五条がやたらに目をパチパチさせてアイコンタクトをしてくるものだからすぐに意図を理解した。
「はい。五条さんは部屋まで(人攫いのように)運んでくれましたし、部屋についてからも(断ったけど)飲み物を勧めてくれたり、(片付けや洗濯など)とても自由にさせてもらっていました」
事情を知らない人間が聞く分には100点満点の刹那の回答を聞いて、五条は「ほらね〜」と得意げにおちゃらける。
そんな五条を夜蛾はサングラスの端から睨みつけるが、すぐに視線を刹那に戻した。
「確認させていただきたいのですが、あなたは八百比丘尼殿で間違いはありませんか?」
一瞬、部屋には沈黙が流れた。
もちろんそれを破ったのは五条であった。
「は?八百比丘尼ってあの?刹那が?」
「まっさかー」と冗談のように笑い飛ばす五条だが、頭の中では刹那が八百比丘尼であれば今までの疑問が全て説明できてしまうことに気付いていた。
五条の術式が効かぬ身体。
若く見えるのに古めかしい中身。
さっきまであどけないと思いきや急に年輩者のような振る舞い。
しかも、自己犠牲寄りの献身はまさに仏に仕えていても何ら不思議ではない。
黙ったままの刹那を見れば、刹那はひどく困ったような、少し悲しそうな、そんな表情を浮かべていた。
「…どうしてそれをご存じなのですか?」