第3章 招いて赤
五条は勢いよく刹那の方を向くと掴みかからん勢いで。
「ちょっと、待って待って!全部洗ったの!?」
「はい、籠に入っていたものは洗いました」
「アレも?」
「“あれ”とはどれでしょう?」
「アレだよ!パンツ!」
「“ぱんつ”とはどれでしょう?」
「これだよ!これ!」
もうどう見ても洗われて、そして皺一つなく干されている黒やグレーのボクサーパンツを指差しながら必死の形相の五条とは裏腹に、呆気にとられる刹那は小首を傾げている。
「はい。洗いましたが…大切なものでしたか…?」
「違うー!これは…昔っぽくするとなんだ?…そう、フンドシ!」
「あー、これ、褌なんですか。今はこうなっているのですね。場所を取らなくていいと思います」
「だから、違うって!っもー、なんで女の子にパンツ手洗いされなきゃなんないんだよ」
熱くなる顔を両手で覆い、天を仰ぐ。
隠しきれていない耳まで赤い。
羞恥に堪える身体は微かに震える。
出会ってからこれまで常に飄々としていた五条が顔を赤くして打ち震える様子は刹那には憤怒に見えたらしい。
「あの…申し訳ありませんでした。まさか、洗ってはいけないものだとは露知らず…差し出がましい真似をいたしました…」
頭を深々と下げて誠心誠意の謝罪をされればいよいよこの感情の置き場所に苛まれた五条は。
「違うんだって!女の子にフンドシ洗われて恥ずかしいの!」
もう心境を告白するしかなかった。
今度は顔を覆って俯く。
「母さんにも洗われたことないのに!」
「良家のご出身なんですね」
「もうお婿にいけない!」
「良家ならお嫁様が嫁いでいらっしゃいますよ…あ、嫡男ではありませんでしたか?」
「僕は一人っ子だよ!」
「では安泰ですね」
一向に噛み合わない会話に五条の方が今度こそ完全に白旗を上げた。