第3章 招いて赤
五条は生気を抜かれたように部屋に戻ると座面が広くなったソファに身を投げ出すように座る。
遅れてやってきた刹那がソファの横に膝を折って座った。
「まだお疲れでしょうか?」
「たった今疲れたんだよ」
「たくさんお話されてましたからね」
「ったく、誰のせいだよ」
にこやかに話す刹那に五条は思わず毒づいてしまう。
どうせこんな毒もものともしないのだろうと息をつくと、天井を見上げたまま続けた。
「ホント、刹那って何者?こっちの常識、全然通じないじゃん」
「申し訳ありません。長い事、人から離れた生活をしていたもので…」
五条の随分素の見える声に、刹那も自然に話をしていた。
もちろん、『休まなければ話さない』という約束をしていたので、五条が休んだ今、話をするのもやぶさかではないのだろう。
「…どのくらい?」
「150年ほど…正確には145年なのですが」
「それ、もう150年でいいよ。何?刹那って人間じゃないの?」
「人間…じゃないのでしょうか?人間でありたいとは思っているのですが…」
それまでは穏やかに話していたのに、ここだけは悲しそうな色が混じって引っかかる。
「それって」
「どういう意味?」と聞こうとした時だった。
五条のスマホの着信音が鳴る。
画面には『夜蛾学長』と表示されている。
「お、夜蛾学長、早起きだねー」なんて軽口を言いながら、通話ボタンを押して耳に当てる。
「悟、今どこにいる?」
いつも以上に低い声に、(え、寝起きの機嫌悪ぅ)なんて内心思いながら「今、僕の部屋だけど?」と返す。
「メールに書いてあった『面白いもの』は?」
「今一緒にいるー」
「その方を今すぐ応接室にお連れしろ」
「は?」
「いいか?今すぐだ」
そう言うと夜蛾は一方的に電話を切った。
寂しい電子音が流れるスマホを見つめ、刹那に視線を移す。
「えっとー、刹那ってどっかのお偉いさん?」
「いいえ、そんな大層なものになったことはありませんが…」
「だよね?なんか今すぐ来いって言われたんだけど」
「はぁ…」
「とりあえず、行こっか」
二人とも何がなんだかわからない中、来た時よりもさっぱりとした部屋を後にした。