第3章 招いて赤
五条は肩に担いでいた刹那を肩から下ろして身体の前で抱える。
所謂お姫様抱っこだ。
「?」
「あの体勢じゃお腹苦しくて話しづらいでしょ」
「もう逃げませんので降ろしていただいても大丈夫ですよ」
「それはダメ。僕の部屋まではこのまま」
刹那は小さく息を吐く。
どうやら諦めや戸惑いはない代わりに呆れてはいるようだ。
「重くはないですか?」
「全っ然!あと5キロは全力疾走できるくらい余裕」
そう笑って見せれば溜息混じりに「そうですか」と困ったような顔をしていた。
その後も「もっと食べた方がいいよー」や「昨日何食べた?」など訊いてはみたものの「はぁ…」とか「いえ」とかはっきりしない返答しか得られなかった。
そうこうしていると高専内の五条の部屋へと着いた。
「はい!到着ー!」
一度刹那を降ろしてドアノブに手をかける。
普段から部屋には結界を張っているので五条本人でなければ開くことはできない。
「女の子なんて部屋に入れないんだから、特別だよー?」なんて言いながらドアを開く。
刹那は開かれたドアの前で立ち止まっている。
「ま、遠慮しないで入って入って」
「……あの」
「ん?」
「この部屋、空巣狙いに入られてませんか…?」
目の前に広がる五条の部屋は刹那が言うように、空き巣に入られたように物が散乱していた。
ソファやベッドには脱いだ服が無造作に置かれているし、机の上には書籍や資料が雑多に積み重なっている。
床には至る所にいろいろな荷物が置かれている。
「僕の部屋、いつもこんな感じよ?忙しくて片付けるヒマないし、散らかってるけどどこに何あるかはわかってるから大丈夫、大丈夫!」
「はぁ…」
五条は完全に部屋に圧倒されている刹那には構わず、背中を押して部屋に入れると鍵を閉めた。
「ま、テキトーにソファの服どかして座ってー。何か飲む?」
「いえ、お構いなく」
「あ、そ」
五条は冷蔵庫から炭酸飲料を出すの一気に飲んで大きく息を吐き出した。