第1章 第壱話 約束の意義
マリはミサトの横に座って話して、カイはデスクで作業をしながらチラチラ様子を伺っている。
「……みて」
「?なんだい?おお。絵か。上手だね」
ミサトがカイに歩み寄ってみせたのは動物の絵だった。
「ミサトちゃん、カイ君を相当気に入ったみたいね」
ユイはコーヒーを口に運びながら微笑んだ。
「子供にもモテモテってわけだ。さすがだなあ」
「『子供にも』ってなんすか……」
「五十嵐。死海文書の解読はゼーレで進んでいるのか?」
ゲンドウが話しかけてきた。
「ああ……してはいるみたいですけど……こっちの方が早くできるかと」
「そうか」
「ねえ……あのお兄ちゃん……なんの仕事してるの……」
「あのお兄ちゃんはねえ……世界を救うヒーローなんだよ!」
「それは言い過ぎだな……ただの学生っす……」
カイの電話が鳴った。カイは液晶を見て眉をひそめた。
「すみません。ちょっと席外します」
「ああ……誰からだ?」
「ゼーレです」
そういうと廊下へ出ていった。数分後。カイは帰ってきた。そして席につくなり、難しい顔をしている。
「カイ君なにかあったの?」
正面にいるユイが心配そうに訊いた。
「……いや……進捗を訊かれただけです」
「無理しちゃ駄目よ」
すると研究室の扉が開いた。
「すまんな。今戻ったよ。ミサト」
「お父さん……あのね……お菓子……あのお兄ちゃんにもらったの……」
「そうかそうか……ありがとう五十嵐君。真希波君も。迷惑かけなかったかい?」
「迷惑なんてないですよHP回復しました!」
「そうか。冬月もありがとう。ではまた」
「バイバイ」
ミサトがカイに手を振るとカイは手を振り返した。
中庭
「やっぱりここにいた。ここお気に入りだもんね」
カイがベンチに腰掛けていたのをマリは見つけた。
「マリさん……」
「進捗どうなの?そんで……さっきの電話……ただの状況確認じゃないんでしょ?」
「……貴女に言ってどうなるんですか」
「冷たいなあ……じゃあ……体で払うってのはど?」
「古いですね。やり方が」
「どうなのよ?帰ってきてから元気ないぞ?元気出してこーよ」
「………」
「……前から思ってたけどなんで敬語なの?同級生で同僚だしさ。っていうか私の方が年下じゃないの?」
「……僕は誰にでも敬語使いますよ」
「そっか。それがカイ君のいいとこなのかもね」
