第2章 餞別/氷織/双子妹/微病み
当てつけ、いじけ。
これは下手で惨めな感情のサンドバッグだ。
本当はわかっている。羊だって被害者だ。
子供は親を選べないのだから、全責任を羊に乗せるのは違う。それくらいの分別はある。
繭自身が湾曲した愛を今でも親に求めているから、自分の正当性を許すために、羊を悪の元凶に置くしか方法がないだけだ。
でも、たまらなく期待している。
二度と帰って来なければ、サッカーの何とかとやらで親友でも出来て、あのモンスター達を捨てて、繭のことも忘れてくれれば、いよいよ親も目が覚めるのかもしれない。あの人達は繭を見てくれるかもしれない。
そして何よりも、本当は怖くてたまらない。
物理的に生活の中から羊が消えて、あの人達が羊に時間や関心を使う間は確かになくなるはずなのに。
それでもなお、目に見えないはずの羊に対して、あの人達の心や愛を羊が遠くから縛り続けるのだとしたら、いよいよ希望が潰されて壊れてしまいそうになる。
自分て、なんなのか。
なんで、生まれてきたのか。
(お前のせいで、私が愛されない)
羊がいなくなったら、もうこの言い訳がなくなる。
幾層にも重なる感情が叫びみたいにどろどろに渦巻いている。
「餞別?に、いいもの見せてあげる」
「…………」
繭は右手の袖をそっとまくって見せた。
ここで言う「いいもの」とは、完全に自分の主観の話だ。
羊の大きな目がほんの少しだけ見開かれるのが伝わり、微かにゾクリとする。