第2章 餞別/氷織/双子妹/微病み
・無糖
・ゆるい流血あり
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(なんで恵まれているお前の方が、被害者面をしている)
たったの一度も確認したことはないけれど、これは繭と繭の双子の兄・氷織羊との共通認識であると繭は勝手に思っていた。
羊は両親の期待を一身に受け、いつも期待され関心を集め、親の時間も心も永遠に縛り続けているのに、本人はそれをどこか受け取りきらずに熱を低くし“当たり障りなく”生きている。
繭から見ればこんなにも多くの愛を受けているのに、そこに感謝もなければ、一歩引いてものを見ているように感じる所も気に食わなかった。
この事に、気付けるようになれたのは中学に上がった頃からだ。
羊は子供の頃からサッカーもうまいし、人当たりも良い。
外見だって整っているし頭もいい、言葉も優しい。
いつだって注目の的で、期待されて愛されている。
友達にも知り合いにも“あんな双子のお兄さんがいてうらやましい”ともう100回も200回も300回も言われてきた。
羊を通じて自分が褒められているように思えて、嬉しかった時期もほんの少しだけあったのも事実だ。
けれど、今にして思えば、小さな頃からずっと違和感の方が強かった。
子供の幼い心と身体では、感覚も知覚も言語化も拙いばかりで整理が出来なかっただけだ。
今になってようやく、真実が見えてきたということだ。
やっとここまで耐えて、大人になれてきたということだ。
そんな惨めな自分を少し褒めてあげたいのに。
なのに、羊はもっとうんと、ずっと先にいる。
“比べてしまうと”それすら許されないではないか。
繭は羊みたいに衝突を避けて当たり障りない良い子にはなれないし、愛想もなければ話術もない。
大人に近づけたはずなのに、いつまでたっての被害者意識の固まりで頭でっかちな拗ねた子供のままだ。