第1章 OKの理由/二子/クラスのギャル女子/日常
繭自身、自分の顔が一気に熱を持つ感じはしたが、それは羞恥なのか何なのかがまだわからなかった。
二子は一呼吸だけ置いてから、またもその場を去ろうとする。
「待て、お前……っ」
「まだ何か?」
ひとつだけ、確認しておかなければならないことがある。
「……なんで今日、あっさり課題写させてくれた?」
「……つまり、罪悪感の払拭というか、ほんのフォローというか。まぁ色々です」
「……最っ悪じゃん」
前々からそんなことが後ろの席のオタクにバレていたとは。
そう思うだけで波の立つ複雑な気持ちに整理が付かないではないか。
またも先にその場を離れようとする二子に向けて、繭は大きな声を出す。
「待てコラ!!」
「なんですか。時間ないんですけど」
「お前……むっつりオタクかよ変態!」
「僕が見たくて見た、みたいな言い方やめて下さい。そちらが僕の視界に入ってきたんですから」
「言い訳すんな!」
「今日は見えてなかったので大丈夫ですよ」
「……マジでぶっ飛ばすぞ」
「冗談です」
さくさく足を進める二子に、またも追いついて食いついてみる。
繭の中の気持ちの落とし所が、未だに見つからないからだ。
「オタクのくせに調子乗るな!」
「急に属性攻撃ですか」
「属性ってなんだよ!?オタク語知らないから!」
「顔真っ赤ですよ」
「……!これは、だから……」
廊下の横からは、不似合いなツーショットを不思議がる声がヒソヒソ聞こえてきた。
しどろもどろになっては、言葉に詰まってしまう。
二子は急に、しおらしい小声で話しかけてくる。
「……すみません。別にからかった訳じゃないです」
「……コラっ!勝手に謝って勝った感出すな!」
「まあ、誰にも言わないんで安心してください」
「今更安心出来ないだろ!?」
釈然としない気分のまま、繭はオタクの後ろ姿を見ながら考えた。
あの席にいる以上、しばらく安心は出来そうもない。
だが、もしかしたら良いからかい相手が出来て退屈しなくて済むかもしれない。
「……なんかムカツク!!」
そんな勝手な予感はあった。
Fin