第1章 OKの理由/二子/クラスのギャル女子/日常
いかにもオタクらしい固さと丁寧さだ。
予想よりも会話のテンポは悪くはないが、噛み合うとは言えない。
受け取ったノートをパラパラ見れば、言うほど文字は汚くない印象はあった。
「5時間目までには返して下さい。6時間目に提出なので」
「ん、わかってる~」
借りたノートを一旦しまい、繭は友人の元へ行く。
次の授業かその次の授業あたりの時に、内職をして写せばいいだけだ。
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放課後。
別のクラスの遊び仲間と話していて自室に戻るのが遅くなったせいか、既に教室は人が半分ほどだった。
ちょうど後ろの席のオタクも片付けの途中、そんな雰囲気だ。
今日はこのオタクのおかげでコトなきを得る事は出来た。
繭は一旦自分の席に座り足を組む、そして、身体を後ろの席に向けて軽口で二子に声をかけた。
「さっきはありがとっ、助かった!」
「……いえ」
相変わらず目も合わせないし、声も人に届ける意思が乗っているとは思えなかった。
「……ねえ」
「なんですか」
そもそも前髪が長すぎて後ろの席なのに顔もよくわからないことに今更気付いた。
最近では雰囲気イケメン狙いで前髪をやたら伸ばす男子は多いが、このオタクの場合その意図とも思えなかった。
繭は片付けを続ける二子の前に身を乗り出して、目のあたりをじっと見つめてみる。
「前見えてんの?」
「見えてますよ。当たり前でしょ」
それはそうだが、今はそういう意図で聞いていない。
二子は一度だけ手を止めてそう返してくるが、それ以降の会話は続かなかった。
もう一度、繭の方から話題を広げてみる。