第1章 『知られてはいけない、この気持ち』
唇が重なるたび、
頭の奥がじわりと痺れていく。
優しいのに、
逃がさないようなキスだった。
触れるだけだった口づけが、
少しずつ深くなる。
唇を食まれ、
掠めるように舌先が触れた瞬間。
「……っ、ぁ……」
自分でも驚くほど甘い声が漏れて、
𓏸𓏸は反射的に口元を押さえた。
羞恥で泣きそうになる。
けれど。
その反応を見たハンジの目が、
熱を帯びて揺れた。
「……だめだな」
掠れた声。
「そんな声出されたら、止まれる自信なくなる」
ぞくり、と背筋が震える。
ハンジの手が腰を引き寄せ、
身体がぴたりと重なった。
布越しでもわかる体温。
団長として見ていた人が、
今はこんなふうに自分を抱き寄せている。
その現実だけで、
息が苦しくなる。
「𓏸𓏸」
耳元で名前を呼ばれる。
低くて、
甘くて、
蕩けそうな声。
「……本当に、嫌じゃない?」
確認するみたいに問われ、
𓏸𓏸は震えるまま首を横に振った。
嫌なわけがない。
ずっと、
ずっと好きだった。
言えなかっただけで。
その返事を見た瞬間、
ハンジが小さく息を呑む。
まるで耐えるみたいに目を伏せて、
そのまま𓏸𓏸の首筋へ唇を落とした。
「……っ、ぁ……!」
びく、と身体が跳ねる。
首筋を甘く吸われ、
熱が一気に下腹へ落ちていく。
「ん、……ぁ、ハンジさん……」
無意識に零れた呼び方に、
ハンジの肩がぴくりと揺れた。
「……それ、反則」
低く笑う声。
でも、
余裕なんてほとんど感じられなかった。
むしろ、
必死に抑えているような熱。
ハンジの指先が、
𓏸𓏸の背をゆっくり撫でる。
そのたびに身体が震えてしまう。
「そんなふうに呼ばれて、我慢できると思う?」
「っ……」
「しかも、あんなに隠す気ない目で見つめてくるし」
耳まで熱くなる。
ずっとバレていた。
視線も、
想いも。
「……だって、好きだったから……」
ぽろりと零れた本音。
言った瞬間、
恥ずかしさで顔を伏せたくなったのに。
ハンジは動きを止め、
静かに𓏸𓏸を見つめた。
その視線が、
痛いほど優しい。