第1章 『知られてはいけない、この気持ち』
「……そんな顔で見つめられて、気づかないほど鈍くないよ」
耳の奥が熱くなる。
逃げたいのに、
顎を支える指先が優しくて、
身体が動かない。
𓏸𓏸は震える睫毛のまま、
恐る恐るハンジを見上げた。
近い。
呼吸が混ざりそうな距離。
ハンジはじっとこちらを見つめたまま、
小さく息を吐いた。
「困ったな……」
その声が、
少し掠れていた。
「君、私を避けるどころか、見つめるたび苦しそうな顔するから」
「っ……」
「ずっと気づかないふりしてたんだけどね」
心臓が止まりそうになる。
気づいて、いた。
自分の視線も、
隠していたつもりの感情も。
全部。
羞恥で頭が真っ白になる。
「ご、ごめんなさ……」
また謝ろうとした瞬間。
「だから、なんで謝るの」
ハンジが苦笑する。
そのまま、
顎に添えていた指が、
そっと頬を撫でた。
びく、と肩が震える。
「私に憧れるのは、そんなに悪いこと?」
「……だって」
声がうまく出ない。
「団長、ですし……私はただの兵士で……」
「立場の話?」
ハンジは静かに首を傾げた。
「それとも、“変人だから好きにならない方がいい”って?」
図星だった。
𓏸𓏸の目が揺れる。
ハンジはそれを見て、
少しだけ寂しそうに笑った。
「みんな、そう言うんだよね」
その笑い方に、
胸が締め付けられる。