第1章 『知られてはいけない、この気持ち』
「……顔、赤いね」
「…っ」
「熱でもある?」
額へ手が伸びる。
ひやりとした指先。
たったそれだけなのに、
𓏸𓏸の喉から小さく息が漏れた。
「……あ」
しまった、と思った時には遅かった。
ハンジの目が、
わずかに揺れる。
静かな沈黙が落ちた。
触れられただけで、
声が出るなんて。
まるで。
まるで、
期待しているみたいで。
羞恥で逃げ出したくなる。
「ご、ごめんなさい……っ」
𓏸𓏸が身を引こうとした瞬間。
腰に回っていた腕が、
少しだけ強くなった。
「……どうして謝るの」
低く落ちた声に、
息が止まる。
さっきまでの穏やかな空気とは違う。
ハンジの視線が、
𓏸𓏸を静かに捉えていた。
「君、私のこと苦手?」
「え……?」
「だったら、そんな顔しないだろうしな……」
独り言みたいに呟いて、
ハンジはわずかに眉を寄せる。
その顔が、
妙に苦しそうに見えた。
𓏸𓏸は混乱する。
どうしてそんな顔をするの。
困っているのは、
苦しいのは、
ずっと自分の方だったはずなのに。
「団長、私は……」
言いかけた声が震える。
知られてはいけない。
知られたくない。
でも。
これ以上近づかれたら、
きっと隠しきれない。
ハンジの指先が、
そっと𓏸𓏸の顎へ触れた。
逃がさないように、
けれど優しく。
「……そんな顔で見つめられて、気づかないほど鈍くないよ」
耳の奥が、
じわりと熱を持つ。
その瞬間。
ずっと隠してきた想いが、
見透かされた気がした。