第5章 『その温度を、まだ知らないふりで』
心の内にしまっていた気持ちがちらつく。
——今思い出さないで……。
そう思った瞬間、
肩に置かれた手に、びくりと身体が揺れた。
ゆっくり力が込められる。
内側から外側へ、少しずつ位置を変えながら押されていく。
「……気持ちいい」
ぽつりと漏れた声に、変に意識してしまう。
肩甲骨の辺りを押しながら、ゆっくり指が上へ移動する。
首に近づいてくる。
それだけで、呼吸が浅くなった。
きっとハンジは、ただ凝っている場所を探しているだけ。
そう思うのに、
指先が近づくたび落ち着かない。
時折、服の隙間から素肌に触れる感触に、肩が小さく揺れる。
「痛い?」
「……ううん、大丈夫」
慌てて誤魔化す。
肩を押されるたびに、服越しにハンジの手の温かさが伝わってくる。
——温かい。
いつもなら、安心するはずなのに。
今は、その温度が触れられていることを余計に意識させた。
指先が、少しずつ上へ移動していく。
「ここ、結構凝ってるね」
首筋に触れた親指が、凝りを確かめるように軽く押した。
「っ……」
息が漏れかけて、慌てて飲み込む。
ゆっくりと位置を変える指先を、意識しないなんてできない。
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