第5章 『その温度を、まだ知らないふりで』
「……なんか今日、力入ってるね」
ふいに落ちた声に、
肩がびくりと揺れる。
「そんなことない、と思うけど……」
慌ててそう返すと、
ハンジの手がまた肩へ戻る。
だけど今度は、
押す力を確かめるみたいに少しゆっくりだった。
肩へ触れるたび、
小さく揺れる身体。
首筋へ近づけば、
身体が強張る。
触れた瞬間、
小さく力が入るのに、
逃げる気配はない。
ハンジの指先が、
探るみたいにゆっくり動く。
「……ふうん」
小さく零れた声。
やけに優しい声だった。
近づいてくる気配に、
無意識に肩へ力が入る。
首筋へ触れた親指が、
様子を窺うみたいにゆっくり押される。
「っ……」
今度は、はっきり肩が跳ねた。
小さく漏れた息に、
ハンジの手がぴたりと止まる。
静かな間。
そのあと。
「ちょっと、こっち向けるね」
独り言みたいに落ちた声と一緒に、
不意に首へ手が添えられた。
親指だけじゃない。
うなじから喉元まで、
手のひらの熱が一気に広がる。
支えるみたいに首を包まれて、
呼吸が止まりそうになった。
そのまま、
指先が顎の下へ滑り込む。
喉元を掠めながら、
顎下へ沿うように触れた熱に、
頭が真っ白になった。
「……ぁ、」
今まで堪えていた声が、
耐えきれず漏れる。
ハンジの手が、
また止まった。
さっきまでとは違う沈黙。
それから、
少し低くなった声が落ちる。
「……首、弱いの?」
心臓が跳ねる。
「わか、んない……」
掠れた声が漏れる。
「こんな風に触られたこと、なかったし……」
一瞬だけ、空気が静かになる。
「“こんな風に”、ね」
その言い方が、
変に意味を含んで聞こえて。
息が浅くなる。
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