第3章 2
数日後。
港は、同じように騒がしかった。
みかは、その中に立っていた。
用事は、もう終わっている。
帰るだけのはずだった。
それでも、足が動かない。
視線の先に、あの大きな船がある。
理由は、うまく言えない。
ただ、少しだけ気になった。
みかは、ゆっくり歩き出す。
気づけば、船のすぐ近くまで来ていた。
少しだけ足を止める。
上がるかどうか、ほんの一瞬だけ迷う。
そのとき
横から、煙が流れてきた。
船の脇。
サンジが、壁にもたれて煙草をくわえていた。
視線が合う。
サンジは煙草を口から外す。
ほんの少しだけ、間。
「……来たのか」
軽い声。
みかは少しだけ驚いて、
「……はい」
小さく答える。
サンジは煙を吐く。
それから、煙草を指で挟んだまま視線を向ける。
「迷ってんのか?」
みかは一瞬だけ言葉に詰まる。
「……そんなつもりは」
「ま、いいけどな」
軽く流す。
サンジは煙草を灰皿に押し付けて火を消す。
立ち上がる。
みかの前まで来て、少しだけ距離が縮まる。
「腹、減ってねぇか?」
唐突に聞く。
みかは一瞬だけ考えて、
「……少しだけ」
正直に答える。
サンジは小さく笑う。
「ちょうどいい」
それだけ言って、歩き出す。
「ちょっと付き合えよ」
振り返らないまま。
みかは一瞬だけ船の方を見る。
でも、すぐに視線を戻す。
「……どこにですか?」
「その辺だ」
いつも通り、少し雑な答え。
でも、不思議と嫌じゃない。
みかは少し遅れて、その後ろを歩き出す。