第2章 出会い
皿は、気づけば空になっていた。
「ごちそうさまでした」
みかは小さく頭を下げる。
サンジは軽く手を振る。
「どういたしまして、レディ」
いつも通りの軽さ。
みかは少しだけ迷ってから、立ち上がる。
来たときと同じ場所。
同じ距離。
でも、何かが少しだけ違う気がした。
「……そろそろ、帰ります」
自然な言葉。
サンジは一瞬だけ手を止める。
それから、何でもないように頷く。
「ああ」
短く、それだけ。
みかは出口に向かう。
数歩、歩いたところで。
「……また、来てもいいですか」
少しだけ小さな声。
サンジはほんの一瞬だけ黙る。
それから、軽く笑う。
「いつでも来い」
みかは、ほんの少しだけ息を抜く。
「……ありがとうございます」
サンジはそのまま歩き出す。
「送る」
短く、それだけ言う。
みかは少しだけ驚いた顔をして、
「……すみません」
「だから謝るなって」
軽く返す。
二人で船を降りる。
港の音が、ゆっくりと戻ってくる。
さっきまで遠かったはずなのに、
やけに、はっきり聞こえる。
並んで歩く。
言葉は少ない。
でも、不思議と気まずくはない。
人の流れが見えてきたところで、
サンジが足を止める。
「ここでいいだろ」
それ以上は踏み込まない距離。
みかは小さく頷く。
少しだけ、間。
「……また来ます」
今度は、少しだけはっきり。
サンジは軽く手を上げる。
「待ってる」
みかは、ほんの少しだけ目を見開く。
でも何も言わずに、背を向ける。
港の人混みに紛れていく。
数歩、歩いて。
ほんの少しだけ、足を止める。
振り返らない。
でも。
胸の奥に、さっきの味が残っている。
理由は、ない。
でも。
「……また来ます」
小さく、こぼれる。
それから、ゆっくり歩き出す。