第2章 出会い
船の奥。
キッチンに入ると、また少し空気が変わる。
外の騒がしさが、少しだけ遠くなる。
サンジは歩みを止めずに、椅子に手をかける。
「こっちにどうぞ、レディ」
軽く引く。
みかは一瞬だけ戸惑って、それから腰を下ろす。
サンジはすぐに手を離して、キッチンへ戻る。
もう迷いはない動き。
火が入る音。
包丁のリズム。
油の弾ける小さな音。
どれも強くないのに、はっきり聞こえる。
「退屈してねぇか、みかちゃん」
振り返らずに声だけ落ちる。
「……大丈夫です」
少し間を置いて、
「見てるの、好きなので」
その言葉に、サンジの手がほんの一瞬だけ止まりかける。
でも、すぐに戻る。
「そりゃ光栄だ」
軽く返す。
火加減が、少しだけ丁寧になる。
しばらくして。
皿がひとつ、目の前に置かれる。
「ほら」
湯気が静かに上がる。
ほんの少しだけ、潮の匂いが混ざっていた。
みかは、わずかに目を細める。
「……ここのですか?」
サンジは少しだけ笑う。
「ああ」
それだけ。
「いただきます」
静かに言って、口に運ぶ。
その瞬間。
ほんのわずかに、動きが止まる。
驚いたわけでもない。
大きな反応でもない。
ただ、静かに止まる。
サンジはそれを見る。
何も言わない。
みかはもう一口食べる。
「……おいしいです」
小さな声。
でも、迷いがない。
サンジは少しだけ息を吐く。
「だろ?」
軽く言う。
みかはまた食べる。
その動きが、少しだけゆっくりになる。
味わっているのか、
何かを確かめているのか、
分からない。
でも。
ほんの一瞬だけ、視線が揺れる。
何かに触れかけて、届かないみたいに。
「……どうした?」
サンジが聞く。
「……いえ」
小さく首を振る。
「なんでもないです」
また口に運ぶ。
外では、まだ笑い声が続いている。
でもこの場所だけ、少しだけ静かだった。
サンジはそれを見て、目を細める。
……なんだろうな
言葉にはしない。
ただ、少しだけ引っかかる。