第16章 ★
船はいつものように進んでいた。
風が強く吹き抜けるたび、デッキのあちこちから声が上がる。
「腹減ったー!」
「さっき食べたばっかだろ!」
「もう食ってる!!」
口いっぱいの声に、笑いが重なる。
その少し後ろ、甲板の片隅。
ナミとロビンが、さりげなくサンジに視線を向けた。
「で、冬島は?」
ナミの声は小さい。
ロビンは何も言わず、ただ聞いていた。
サンジは煙を一度吐き出してから、軽く肩をすくめた。
「まぁ……ちょっと厄介な島だったな」
「厄介?」
「孤独がどうとか、能力がどうとか……説明すると長くなるやつだ」
視線の先で、チョッパーが荷物を抱え直しているのが見える。
「でも、もう解決してる。心配するような話じゃねぇよ」
ナミは少しだけ目を細める。
「ほんとに?」
「ほんとに」
サンジはそれだけ言って、軽く笑った。
その視線の端に、みかがいる。
何気なく笑っているその横顔を、一瞬だけ見て、すぐに逸らす。
「ま、心配するようなことじゃない」
ロビンはそれ以上聞かなかった。
ナミも小さく息を吐いて、話題を切り替える。
デッキにはまた、いつもの騒がしさが戻っていく。
風の音と笑い声が混ざって、船は何事もなかったように進んでいた。