第6章 5
港。
いつもと同じ時間にそこへ向かった。
風も波も、変わらない。
でも、その場所にサンジはいなかった。
最初から、今日は少し静かだった。
それでも一度だけ、視線が探してしまう。
「……いないんですね、今日は」
誰に言うでもなく、小さく落とす。
少しだけ立ち止まる。
それだけ。
そのまま歩き出そうとしたとき、
港の少し奥、いつもとは違う場所にサンジの姿があった。
煙草をくゆらせている。
いつもと同じようで、少しだけ距離のある位置。
気づくのは、ほんの一拍遅い。
「……おう」
軽い声。
みかも少しだけ間を置いて返す。
「こんにちは」
会話はそれだけ。
サンジは視線を海に戻したまま、ぽつりと言う。
「……今日は、タイミング悪いな」
みかは少しだけサンジを見る。
それから何も言わず、隣に立つ。
サンジは煙を吐いて、
「まぁ、悪くねぇけどな」
とだけ言う。
みかはその言葉の意味を聞かないまま、
ただ隣にいる。
風が流れて、
またいつもの港の音に戻っていく。
「いくか」
並びながら歩き出す。
距離は変わらない。