第5章 4
それから港を通るたびに、
船の上にサンジの姿が見える日があった。
手すりにもたれて煙をくゆらせているだけ。
それだけの光景。
目が合えば、軽く手が上がる。
それ以上はない。
でも、それで十分だった。
いない日もある。
その日は少しだけ視線が止まる。
けれど、探すほどではない。
そのまま歩き出す。
ある日は、
オレンジ色の髪の女性と話しているのを遠くに見かけた。
笑っているようにも見えたし、ただ話しているだけにも見えた。
距離があるせいで、よくわからないまま通り過ぎる。
みかは足を止めない。
ただ一度だけ見て、
それから何もなかったように歩く。
港はいつも通りで、
サンジも、いる日といない日があるだけだった。
そして、その日。
港の端。
地上に、サンジはいた。
煙草をくゆらせながら、海の方を見ている。
みかが近づく気配に気づいたのかどうかは、わからない。
ただ、振り返らずに言う。
「ちょい、こっち」