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まだここにいる【サンジ】

第4章 3


次の日

港の端。

人の気配が少し遠のいた場所。

風に乗って、煙が細く流れていく。

サンジは手すりにもたれたまま、火の先を軽く弾く。


足音が近づく。


迷うみたいに、少しだけ間のある歩き方。


振り返らない。


それでも、わかる。



「……また来たのか」



みかの足が止まる。


「え……なんで」


少し戸惑った声。


サンジは煙を吐く。



「足音」



それだけ



風の音だけが流れる。



「で」



サンジはまだ振り返らない。

「今日は何しに来たんだ」

みかは言葉に詰まる。


「……えっと」


何か言おうとして、止まる。


自分でも理由がはっきりしない。






サンジがゆっくり煙を吐き出す。

それから、ようやく振り返る。

視線が合う。



一歩



「飯か」



軽く言う。

みかの肩がわずかに揺れる。

もう一歩、距離が詰まる。



「……それとも」



少しだけ目を細める。




「俺か?」



心臓がうるさい。


言葉が出てこない。


視線が揺れる。


逃げるみたいに、少しだけ逸らす。



「……違います」


小さく言う。






「……たぶん」




サンジは一瞬だけ黙る。

それから、口元が少しだけ緩む。


「そうかよ」


ふっと、短く息が抜けるみたいに笑う。



風が少し強くなる。

みかの髪が揺れる。

サンジは何も言わず、ほんの少しだけ立ち位置を変えた


みかは気づかない。


ただ、さっきより少しだけ息がしやすい。




「……あの」


みかが口を開く。

さっきより、少しだけ近い距離。


「また……来てもいいですか」


少しだけ迷いながらも、はっきり言う。



サンジは少しだけ目を細める。

それから、肩をすくめる。

「来るなって言った覚えはねぇな」

言ったあと、

ふっと、ほんの少しだけ笑う。




みかは一瞬だけ驚いて、

それから、小さく笑う。


「……はい」



理由は、まだ言えない。

でも。

来る理由は、もうあった。
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