第3章 2
さっきより、少しだけ距離が近い。
サンジは視線を外したまま、ぽつりとつぶやく。
「そういうの、普通にやるタイプかよ」
みかは一瞬だけ固まる。
「あっ……」
自分の手元を見て、ようやく気づく。
ほんの少し間があく。
頬がじわっと熱くなる。
視線を逸らして、小さく笑う。
「……すみません」
サンジは軽く息を吐く。
「気にすんな」
そう言って、ふっと笑う。
みかが小さく頷いた、その瞬間。
サンジはほんの一瞬だけ手を伸ばして、みかの頭を軽く撫でる。
すぐに離す。
「……調子狂うな」
何でもないみたいに言う。
みかは一瞬だけ固まる。
それから、遅れて頬が熱くなる。
「……はい」
視線を逸らして、小さく頷く。
そのまま並んで歩く。
さっきより、少しだけ近い距離。
どちらも何も言わない。
でも、その沈黙は嫌じゃない。
むしろ、落ち着く。
通りを抜けて、少し開けた場所に出る。
海が見える。
風が強くて、みかの髪が揺れる。
サンジは何も言わず、少しだけ立ち位置を変える。
風を遮るように。
みかは気づかない。
ただ、少しだけ楽になる。
「こういうところ、よく来るんですか?」
ぽつりと聞く。
サンジは軽く笑う。
「たまにな」
短い返事。
それでも十分だった。
少し間があく。
波の音だけが聞こえる。
サンジが横を見る。
みかの横顔。
すぐに視線を戻す。
「……悪くねぇだろ」
「……はい」
小さく答える。
それだけで、また静かになる。
でも、その静けさが心地いい。
しばらくして、サンジが歩き出す。
「もう少し行くか」
みかは何も言わず、隣に並ぶ。
自然と、同じ歩幅になる。
理由は、まだない。
でも。
離れる理由も、なかった。