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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**


電話をする先生の姿を、ぼーっと眺めていると。
先生の前に、ひとりの女の人が立ち止まった。


(綺麗な人……)


大人で、私とは違う匂いがしそうな人。
細いヒールに、揺れる長い粟色の髪。


その人は当たり前みたいに先生へ近づいて、先生の腕に触れる。
その距離が、あまりにも自然だった。



「……悟……久しぶり…」



風と車の音に混じって、女の人の声が途切れ途切れに聞こえた。



悟。



その言葉だけが、やけにはっきり耳に残る。


私が呼べない名前。
呼んではいけない名前。


女の人が、先生を見上げて笑う。
先生も、いつもの調子で笑って返している。
楽しそうに見えた。


会話までは聞こえないけど、わかってしまう。


女の人が先生の袖を引く仕草。
先生がそれを嫌がらないこと。
二人の間にある、親しい空気。
聞こえなくても、十分だった。


先生は大人だ。
私よりずっと先を歩いていて、私の知らないものをたくさん知っている。
だから、お付き合いしてる女の人がいても、おかしくない。


おかしくないのに。
どうして、こんなに嫌なんだろう。


二人は、まだ何か話しているようだった。
女の人が笑うたび、長い髪がふわりと揺れる。
隣にいる先生と並んでも不自然じゃない。


(先生、ああいう人がタイプなのかな)


それに比べて、私は……。


制服の上からでもわかるくらい、子どもっぽい身体。
あの女の人みたいに自然に名前を呼ぶことも。
触れることもできない。
あの二人の間に割り込む勇気もない。


何もできないまま二人を見て、「早く先生を返して」と願うだけ。
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