• テキストサイズ

【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**


でも、そんなの叶うわけなくて。


不意に女の人がつま先で背伸びをして、先生の頬の近くに顔を寄せた。
長い髪が、先生の肩先にふわりとかかる。


(........あっ)


触れたのか、触れていないのか。
ここからでは、よく見えなかった。


だからこそ、嫌な想像ばかり浮かんでしまう。


先生の頬に、あの人の唇が触れたのかもしれない。
先生は、それを受け入れたのかもしれない。


見なきゃいいのに。
早く、目を逸らせばいいのに。
どうしても、先生から目を離すことができなかった。


視界がじわっと歪む。
瞬きをしたら、涙がこぼれ落ちそうなくらい。


私も欲しい。


先生の隣に立つ場所が。
先生が振り向く理由が。
先生の青い瞳に映る、たったひとりの誰かになりたい。


叶うはずなんてない。
それでも、一度浮かんでしまった願いは消えてくれなかった。



先生。


先生、好きです。
先生、私を見て。


声にならない言葉が、私の中で濃く色づいていく。


ただ純粋に、私が先生を好きになってしまっただけ。
誰にも気づかれることのない、私だけの片想い。


その時の私は、そう思っていた。






けれど、花はもう静かに香りはじめていた。


黒百合が、強すぎる香りで虫を誘い込むように。

彼らの優しさも。
執着も。
嫉妬さえも。

すべてが私を絡めとるための、甘い毒になっていて。


いつか、その二つの花が。
私を二度と逃がしてくれなくなることを――


私はまだ、知らなかった。
/ 75ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp