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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**


言ってから、自分で自分の言葉に少し引いた。


似たようなことを、何度も言われたことがある。

もっとちゃんと見て。
他の子のところに行かないで。


そのたびに、僕は笑ってかわしてきた。
曖昧な返事をして。
受け取る気なんて、最初からないまま。

なのに今。
その言葉を僕が言っている。


を見ると、目をぱちぱちさせて、意味がわからないという表情をしていた。

そりゃそうだ。
僕だって、自分で何を言ってるのか半分くらいわかってない。



「昔、言ったでしょ」

「……昔……?」

「は、僕とおんなじ特別で変なやつだって」



の目が大きく開いた。



「……覚えて、くれてたんですか?」



忘れるわけない。

見えてないもん、泣いてないもんって、バレバレの嘘ついて。
それでも、僕の言葉ひとつで目を輝かせて。
会えるよって返した僕の言葉を、疑いもしないで、何度も小さく頷いて。
僕のあげた喜久福を両手で大事そうに抱えていた、あの小さな女の子。


あの時からの中に、僕の場所ができた。
僕だけの。

なのに今は――。
 


「だから……」



僕は、少し強めに額をこつんと合わせる。



「その場所に、他のやつ入れないでよ」



は、目を丸くして何も言わなかった。
けれど、その頬がじわじわと赤くなっていく。


……なに、その顔。
そんな顔されたら、こっちが困るんだけど。


僕はの額から自分の額を離して、わざと軽く息を吐いた。



「ほーら、寝るよ」



そう言って、僕はの布団から抜け出した。
自分の布団へ戻り、彼女に背を向けて横になる。


背中越しに、が戸惑ったように小さく息を呑むのがわかった。


振り向かない。

振り向いたら、きっとまた余計なことを言う。
さっきよりもっと、どうしようもないことを。

だから振り向かない。

振り向いたら、たぶん負ける。
この僕が。



「……おやすみなさい、先生……」



が布団を掛け直しながら、僕の背中を見ているのがわかった。


……見ないでよ。

いや。
見てていいけど。


そんな矛盾したことを考えて、僕は目を閉じた。
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