第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
𓂃 side:伏黒恵 𓂃
目が覚めた時、最初に感じたのは鈍い違和感だった。
頭が重い。
身体も妙にだるい。
ぼんやりと天井を見上げて、しばらく動けなかった。
部屋はまだ薄暗い。
雨は小雨になったのか、昨夜ほどの音は聞こえない。
(……俺、いつ寝たんだ)
まだあまり働かない頭で、記憶を辿る。
が、お茶っ葉をもらってくると言って部屋を飛び出した。
俺は、その後を追いかけようとして――。
『恵、言ったでしょ』
『に、手出しちゃだめって』
笑いを含んだ、あの人の声。
そこで、俺の意識は完全に途切れている。
「……あの、クソ教師……っ」
弾かれたように身を起こして、視線を横へ向ける。
真ん中の布団は、もう空だった。
五条先生の姿はない。
その向こうでは、壁側の布団でがすやすやと眠っていた。
俺は自分の布団から抜け出して、音を立てないように眠るへ近づく。
すぐそばに膝をついて、その寝顔を見下ろした。
昨日、俺はに告白して――。
ごくりと唾を飲み込む。
キスした。
それも、何度も。
数えてなんか、いないけど。
自分の手のひらを、じっと見つめる。
浴衣の隙間に滑り込ませた手。
そこにまだ残っている、あの柔らかい感触。
思い出しただけで、身体の内側に火がついたみたいに熱くなった。
視線が、の少し開いた唇へ引き寄せられる。
静かな寝息。
無防備な寝顔。
昨夜、俺の名前を呼んだ声。
吸い寄せられるように、顔が近づいていた。
の呼吸が肌にかかった瞬間、昨夜のの顔が浮かぶ。
『さっきのは……ちょっと怖かった』
そう言って、目を伏せた少し悲しそうな顔。
からしたら、俺はまだただの同級生でしかない。
そのくせ、あんなふうにキスして。
怖がらせた。
それでも、俺の気持ちに向き合ってくれた。
だから、こいつは俺に正直に伝えてくれたんだ。
(なのに……何をしようとしてるんだ、俺は)
から顔を離そうとした、その時。