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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**


自販機に拳を叩きつけた時のあの感情が、戻ってくる。


が恵を見ただけで腹が立って。
が泣いただけで調子が狂って。
が僕から離れていくことを考えただけで、気分が悪くなる。


何これ。
まじで何。

ずっといらないと思ってきたもの。
僕、欲しいの?

たぶん。
いや、かなり。
嘘だろ。


それって、つまり――。

……いや。
考えたくない。


だから代わりに、こんな聞き方をしている。
我ながら本当に性格が悪い。



「どっちが特別なの」



の肩口に額を押しつけたまま、彼女の細い呼吸を聞く。


すると、が腕の中でもぞりと身じろいだ。
肩口に押しつけていた額を離すと、ゆっくりとがこちらを向いた。

涙で濡れた目が、至近距離で僕をじっと見上げている。
そんな目で見られると、こそばゆいんだけど。



「先生……なんで……」



はそこで言葉を飲み込んだ。


なんで、そんなこと聞くんですか。
なんで、そんなに怒るんですか。
なんで、こんなことするんですか。

たぶん、聞きたいことはそのあたり。


……なんでだろうね。
自分でもよくわかんない。



「それより答えてよ。そんなに難しい?」



なんで即答しないの?
前ならすぐ答えられたよね。

の唇が、ためらうように微かに開いた。



「せ……」



息みたいな声だった。
けれど、それ以上は続かなかった。
はきつく唇を噛んで、目を伏せる。
涙で濡れた睫毛が、小さく揺れていた。


もう、言えないんだ。
僕の名前だけを、迷わず選ぶことはできない。

の中から、恵を消せないんだ。


胸の奥で、また何かがじりっと焦げるような感じがした。
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