第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
𓂃 side:五条悟 𓂃
風呂に入って頭を冷やしたつもりだった。
なのに、部屋に戻って。
布団の中で小さく丸まっているを見た瞬間、全部だめになった。
頑張って僕を意識しないように、寝たふりをしている姿。
僕の浴衣が擦れる音ひとつで震える身体。
は、やっぱり僕を無視できない。
『……おき、て、ません……』
起きてる?って聞いたら、そうバカ真面目に答えた。
いや、寝てるやつは返事しないだろ。
つい吹き出してしまった。
「……が変わってなくて、安心した」
嘘が下手なところも。
強がっているつもりで、全部伝わってくるところも。
昔のままだ。
でも、抱きしめた時の感覚は、あの頃とはまるで違った。
腕の中に収まる細さも。
小さい頃よりずっと伸びた髪も。
浴衣越しに伝わる柔らかさも。
もう、あの小さな女の子じゃない。
そう思ったら、手が勝手に伸びていた。
浴衣の中に手を入れると、そこにあったのは――僕の知らない、大人びた身体だった。
僕が少し弄ると、簡単に甘い声が漏れた。
はまだ、僕の前でこんなにわかりやすく反応してくれる。
それが嬉しくて。
でも、同時にひどく腹も立った。
恵もこの声を聞いたんだって。
この身体の感触を知ってるんだって。
だから、わざと恵のことを聞いた。
僕以外に目を向けたお仕置きのつもりだった。
よそ見をしたことを、少しでも後悔して欲しかっただけ。
けれど、僕の腕を強く掴んだの目からこぼれたのは、全く違う涙だった。
『伏黒くんだから、とか……先生だから、とか……そういうの、ちゃんと、あるのに……』
その言葉が、思ったより僕の胸に深く刺さった。
ずっと、の中の特別は僕だけだと思っていた。
が誰を見るのか。
誰に心を動かされるのか。
そんなの、考えるまでもないって。
なのに、は――。
恵にも、ちゃんと意味があるみたいに。
僕だけが特別じゃないって、思い知らされた気がした。
の中で、僕と恵が同じ場所に並んでいるなんて。
……笑えないんだけど。