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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**


「……」



名前を呼んだ声が、自分で思ったより低い。



「恵のこと、好きなの?」



そう言った次の瞬間、が弾かれたように顔を上げた。



「ちがっ……私は、ずっと……」

「ずっと……?」

「……先生のことが……」



どくん、と大きく心臓が跳ねた。


……何、今の。

今まで、その先の言葉はいくらでも聞いてきた。
軽く笑って流せるくらいには、聞き飽きていたはず。

誰かに言われても、面倒だと思うだけで。
欲しいと思ったことなんて、一度もない。


の気持ちもとっくに知っている。
知っているはずなのに。


聞きたい……なんて。


僕は親指で、涙に濡れたの目尻を拭った。
そのまま頬に触れて、僕から視線を逸らせないよう顔を上げさせる。



「……続きは?」



の声で。
ちゃんと、最後まで。



「僕のことが、何?」



はきゅっと結んだ唇をゆっくりとほどいた。
小さく息を吸って、覚悟を決めたみたいにまっすぐ僕を見る。



「……わ、私」

「うん」

「先生のことが……す――」



その先がこぼれ落ちる寸前、隣の布団で恵が身じろいだ。

かすかに布団が擦れる音。
畳が小さく軋む音。

の身体がびくっと強ばった。

さっきまで僕を見ていた目が、はっとしたように揺れて。
僕の肩越しに恵の方へ意識が向いたのがわかった。



「……な、なんでも、ないですっ。忘れてください」



はそう言って、僕から逃げるようにまた背中を向ける。
さっきまで言いかけていた言葉ごと。
僕の腕の中からすり抜けるみたいに。


なんでもないわけないでしょ。
喉元まで出かかった言葉を、僕は飲み込んだ。
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