第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
それでも、快感に流されきれなかった。
熱くなった身体の奥で、先生の言葉が冷たく残っていたから。
『恵はこんなふうに、焦らした?』
『こうだった?』
どうして。
どうして、そんなふうに聞くの。
まるで、伏黒くんにされたことを確かめるみたいに。
私がどこまで許したのか、責めているみたいに。
『案外、誰にでもそういうことさせるんだね』
やっぱりそう思ってるんだ。
私のこと、誰にでも触らせるような子だって。
快感で滲んだはずの視界が、別の涙でぼやけていく。
口を押さえていた手を離して、浴衣の中に入り込んでいる先生の腕を掴んだ。
先生の手がぴたりと止まる。
「……っ、やだ……」
私は喉を震わせながら、必死に言葉を押し出した。
「誰でも……いいわけじゃ、ないです……」
涙がひとつ、枕に落ちる。
「伏黒くんだから、とか……先生だから、とか……そういうの、ちゃんと、あるのに……」
「そんな子みたいに、言わないで……」
こんなこと、先生に言ったってしょうがないのかもしれない。
先生は私のことなんて別に好きじゃない。
でも。
あんなふうに思われたままなのは、どうしても嫌だった。
先生は何も言わなかった。
さっきまで私を弄っていた手も。
腰を抱く腕も止まったまま。
怒らせたのかな。
困らせたのかなと思って怖くなる。
けれど、先生は黙ったまま、深く息を吐いた。
肩口にかかった吐息が熱い。
それから、何かを抑え込むみたいにゆっくりと息を吸う。
「誰でもよかったら、こんなにムカついてない」
「……ぇ?」
「じゃあ、恵は?……僕は?」
答えられないまま固まっていると、先生が私の肩口に額をぐりっと押しつけた。
「どっちが特別なの」