• テキストサイズ

【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**


ギシッと畳が鳴って、敷布団が沈み込んだ。


嘘。
嘘でしょ。

すぐ背中に、私よりずっと大きな身体の気配。
ふわりと鼻をかすめたのは、旅館の石鹸の匂いだった。


なんで。
どうして、私の布団に。

頭の中が完全に真っ白になる。
羊は一瞬でどこかへ逃げていってしまった。



「……。起きてる?」



すぐ耳元に、先生の低い声が落ちた。
熱い吐息が耳にかかって、身体がびくっと跳ねそうになる。


起きてるって言ったら、どうなるんだろう。
先生は離れてくれるのかな。
それとも、もっと近づいてくるのかな。
どっちを想像しても、心臓が変な音を立てている。

私は布団を握りしめたまま、眠っているふりをしていると。



「……ふーん。寝てるなら、僕の好きにしていいよね」



先生の言葉の意味を理解するより先に、強い力でぎゅっと抱き寄せられた。



「……っ」



大きな腕が私の腰に回されて、完全に逃げ場を塞がれる。
背中には、先生の大きな身体がぴったりと張り付いていた。


先生が。
先生が、私を抱きしめてる。
どうしよう。


先生の体温が浴衣越しに伝わってくるだけで、頭の中までふわふわと熱くなっていく。


ずっと欲しかった距離。
夢みたいに近いのに、胸の奥がきゅっと痛い。
こんなふうに抱きしめられたいって、何度も願ってた。
嬉しい。
嬉しくないわけがない。


でも、本当にそうされたら、どうしたらいいのかわからない。
どうして。
さっきは、あんなに冷たいことを言っていたのに。


どうして今、こんなふうに触れるの。
嬉しいのに苦しい。
わからなくて胸の中がぐちゃぐちゃになる。


息を殺していると、浴衣の襟元に先生の指がかかった。
するりと肩口までずらされて、さっき廊下で先生に指で強く押された場所が、ちくりと痛んだ。

その場所に押し当てられた柔らかい感触と、歯の感触。


え。
待って。
これ、まさか。
/ 75ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp