第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
「案外、誰にでもそういうことさせるんだね」
「……ぁっ」
の大きく見開かれた目に、じわっと涙が溜まっていくのが見えた。
瞬きをした拍子に、大粒の雫が頬を伝って落ちる。
それを見た途端、頭に上っていた黒い感情が急速に冷えていくのを感じた。
泣かせたいわけじゃない。
そんな顔をさせたいわけでもない。
ただ、いつものように僕を見てほしかっただけなのに。
はまだ、ポロポロと涙を流していた。
うわ。
こういう時、どうしたらいいんだ。
泣かすのは得意だけど、泣き止ませる方法を僕は知らない。
その泣き顔を見ていたら、ふいにと出会った頃のことを思い出した。
呪いが見えるのは変なのかって、が震える声で聞いてきて。
僕は、なんとなく面白半分で答えたんだ。
「変だよ」って。
たったそれだけで、の目にみるみる涙が溜まって。
今みたいに、声も出せないまま泣き出した。
あの時も、柄にもなく焦ったっけ。
子供が泣くなんて、別に珍しいことじゃない。
なのに、が泣いた時だけは、どうにも落ち着かなかった。
なんで、そんな顔するの。
なんで、僕が悪いことしたみたいな気分になるの。
ただの生徒でしょ。
僕のことが好きで懐いてくる、かわいい子。
それだけのはずなのに。
「……ごめん」
口に出してから、自分で少し驚いた。
僕が。
今、謝った?
は涙で濡れた目を丸くして、僕を見上げている。
……そんな顔しないでよ。
余計に調子狂うから。
僕は、制服の袖での頬を拭った。
頬を濡らしていた涙が、布にじわりと染みていく。