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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**


「だから、泣くなよ」



お兄さんは、黒い制服の袖で私の頬をぐいっと拭ってくれた。


変な人だ。
強くて、大きくて、ちょっと乱暴で。
さっきから、ずっと食べてる。
本当に、変な人。

でも、不思議とこの人と一緒なら、変でも悪くないと思えた。



「名前は?」

「……」

「ね。僕は五条悟」



ごじょう、さとる。
その名前を、私は何度も心の中で繰り返した。


青くて綺麗な目をしてる人。
黒いものを、簡単に消してしまった人。
私と同じ変なお兄さん。



「、家どこ? 送ってく」

「知らない人についていっちゃだめって、お母さんが言ってた」

「知らない人って……僕、助けただろ。じゃあ、僕は後ろからついてくから、は一人で帰ってるつもりで歩けば?」

「それ……なんだか、すとーかーみたい」

「…………」






結局、私は家までお兄さんに送ってもらうことになった。
夕方の道を、お兄さんと並んで帰る。
さっきまで怖くて震えていたのに。
お兄さんが隣にいるだけで、嘘みたいに安心できた。



「さっき、なんで術式使わなかったの?」

「じゅつしき?」



聞き慣れない言葉に首を傾げると、お兄さんが「まだわかんないか」と独り納得したように呟いた。



「の力のこと。あのぐらいなら、その力で祓えるよ」

「そうなの? 自分でもよくわかんない。変な生き物、出せるようになったの……最近だから」

「変な生き物? あー、式神のことね」

「黒い鳥みたいなのとか。呼ぼうと思って呼んでるんじゃないのに、勝手に出てくる時があるの」



こんなこと、人に言ったら絶対におかしいと思われるから。
お母さんにも、お父さんにも言ったことがない。
でも、お兄さんは笑わずに聞いてくれた。



「ふーん。いいもん持ってるのに。ちゃんと使えるようになったら、結構強いと思うよ」



強い。
そんな言葉は、私にはぜんぜん似合わない。
私は怖がりで、泣き虫で。
あの黒いものを見ただけで足が動かなくなるのに。



「……あ」



気づいたら、家の前に着いていた。
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