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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**


「やっぱ見えてんじゃん」

「……ぁっ」



あんなふうに目の前で消えたら、見えていないふりなんてできなかった。
でも、さっき「見えてない」って嘘をついてしまったから。
今さら何を言えばいいのかわからなくて、口をつぐんだ。


お兄さんは、手に持っていた紙袋をがさがさと開けて、中から小さな包みをひとつ取り出す。



「ま、いいや」



そう言って、包みを開けると、白いおもちみたいなものをぱくっと口に入れた。



「あれは呪い」

「のろい?」

「そ。簡単に言えば……人が嫌なこと考えたり、怖がったり、そういうのがぐちゃっと固まったやつ」



難しくて、よくわからないけど。
でも、ひとつだけわかった。
今までのあれは、私の見間違いじゃなかったんだ。


だったら……ずっと誰にも聞けなかったことを。
この人になら、聞いてもいいのかもしれない。



「……あ、あれが――」



ランドセルの肩ベルトをきつく握り直す。



「あれが見える私って……変?」



ずっと人に言えなかったこと。
同じように見えるお兄さんに、聞いてしまった。


お兄さんはもぐもぐして、ごくんと飲み込んでから。



「変だよ」



あっさりと、そう返した。


へん。
へん、なんだ。

その言葉が、頭の中で何度も繰り返される。

やっぱり。
やっぱり、私おかしいんだ。
普通じゃないんだ。


泣いちゃだめだと思うのに、目にじわっと涙が集まっていく。
どうしても止められなくて、ぽろぽろと足元の砂に雫が落ちた。



「……え、なんで泣いてんの?」



お兄さんが、目を丸くしてこっちを見ていた。


慌てて袖で目をこすった。
私だって知らない人の前で、こんなふうに泣きたくない。
でも、一度こぼれた涙はなかなか止まってくれなかった。



「な、泣いてない……ぐすっ」

「いや、泣いてるじゃん」

「泣いてないもん……うぅ……」

「……ったく、強情だな」



お兄さんは困ったように頭をかいた。



「普通のやつらから見たらね。でも、僕も変だから一緒」

「……お兄さんも?」

「そ。めちゃくちゃ変。で、最高に特別」



最高に、特別。


変なのに。
おかしいのに。
普通じゃないのに。
それでも、特別って言っていいの?
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