第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
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「今日、僕も一緒に泊まるから」
僕の言葉に、恵から明確な敵意が向けられるのがわかった。
「……は? 何言ってるんですか」
いつもならもう少し僕に気を遣うくせに、今の恵にはそんな余裕は微塵もない。
「たまたま近くで僕も任務があってさ。こんな大雨じゃん? 帰れなくなっちゃって」
「伊地知さんはどうしたんですか。車で帰ればいいじゃないですか」
「伊地知は他にも仕事があるし、帰らせたの。僕やさしーから」
「だからって、なんでわざわざ俺たちの部屋なんですか……」
「えー、旅館の人はいいって言ってたよ? ちゃーんと追加料金払ってきたし」
「そういうことじゃなくて。そもそも、なんで急に……」
僕をこの部屋から追い出そうと、恵が次々と正論を並べ立てる。
でも、そんなのまともに相手にする気はない。
「んー」「へえ」と適当な相槌を打ちながら、布団に寝転がったまま聞き流した。
僕に食ってかかればかかるほど、恵の焦りが手に取るように伝わってくる。
「だいたい、こんな時間にいきなり来るなんて非常識すぎ――」
「恵」
わざと声を低く落とした。
恵の言葉を遮って、じっとその目を真っ直ぐに見据える。
「僕が来て、そんなにマズかった?」
「……っ」
ピタッと恵の口が止まった。
図星を突かれた人間の、わかりやすい反応。
恵の視線が不自然に揺れる。
そして気にせずにはいられなかったのか、ほんの一瞬だけ、恵の背ろにいるの方へ目を向けた。
は顔を伏せたまま、浴衣の合わせを両手でぎゅっと握りしめている。
恵の視線に気づいているのか、いないのか。
ただ、小さくなって震えていた。
つーか……伊地知の言った通りじゃん。
この二人、明らかになんかあったでしょ。
部屋の前に立った時から、嫌な気配は感じていた。
ドアを開けて、それはすぐに確信に変わる。
少しだけ皺の寄った布団。
乱れたのまとめ髪。
僕が入ってきた瞬間、咄嗟にを庇うようにした恵の動き。
まだ部屋の空気に溶けきっていない、甘くて重い熱。
でも、何より一番気に食わないのは――。