第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
窓枠に肘をついて流れる景色を見ていると、遠くの空が一瞬白く裂けた。
「今の、かなり大きいですね。もしかすると旅館の方も停電しているかもしれません」
「……停電ね」
暗い部屋。
一つしかない部屋。
二組の布団。
恵と、……――。
(まぁ……確認するだけ)
僕はスマホを取り出し、恵に電話をかけた。
呼び出し音が鳴り始める。
一回。二回。三回。
画面を見下ろしたまま、つい手に力が入る。
四回。五回。
長い呼び出し音のあと、留守番電話の案内音声に切り替わる。
親指で画面を叩いて、通話を切った。
スマホの画面を、しばらく見下ろす。
恵が電話に出ない。
たったそれだけのことなのに、妙に引っかかった。
気づいていないだけかもしれない。
もう寝ているだけかもしれない。
大して気にすることじゃない。
でも、今夜だけ――。
が恵の隣で違う顔をしているかもしれない。
……やだな、それ。
それ以上は、なぜか考えたくなかった。
、だめだよ。
僕以外を見るなんて。
そんなこと、覚えなくていい。
何考えてんだろうね……僕。
可愛い教え子だから?
僕を好いてくれるのが、面白くて心地いいから?
どれも、たぶん間違ってはいない。
でも、それだけじゃこの気持ちを説明するには足りない気がした。
窓を叩く雨音が、僕を煽ってくる。
「……急いで、伊地知」
「は、はいっ」
雨の中、車はさらに速度を上げた。