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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**


「五条さん、お疲れ様です。高専へ戻られますか?」

「んー、そうだね」



サングラスを外し、アイマスクにかけ直しながら軽く返す。
伊地知は「承知しました」と頷き、車を発進させた。



「あの……そういえば、伏黒くんたちの件ですが」

「ああ。恵から聞いてる。電車止まったんでしょ。旅館に泊まるって」

「はい。今夜中のお迎えは難しいかと」

「まあ、この雨じゃね」



フロントガラスでは、ワイパーが忙しなく動いている。
それでも視界はすぐに雨で滲み、街灯の光が濡れたガラスの向こうでぐしゃぐしゃに歪んだ。



「ただ、その……」

「何」

「伏黒くんとさんが同室というのは……少々、気になりまして」

「気になるって、何が?……ああ、そういう心配?」

「えっ、あ、いや、その……っ」



伊地知の歯切れの悪さに、思わず笑ってしまう。



「伊地知ぃ、テレビの見過ぎ。恵だよ?」

「はい」

「だよ?」

「はい」

「何もあるわけないでしょ」



まぁ、恵は好きな子と一緒で悶々としてるかもしれないけど……。



「もちろん、私もそう思います。ですが……何かの弾みで、ということも……二人とも年頃ですし」



何かの弾み。
さっきまで笑えていたはずなのに、なぜか口元が動かなくなる。



「……いえ、すみません。考えすぎですね。余計なことを申し上げました」



伊地知は慌てたように笑って、運転に戻る。


そう。
その通り。
何もあるわけがない。

……ないはずなのに。



「……伊地知」

「は、はい」

「やっぱり予定変更。恵たちの旅館に向かって」

「えっ、ですが、今からだと――」

「いいから。行って」

「……あ、はいっ」



伊地知が慌ててハンドルを切って、車は高専とは違う方向へ走り出す。
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