第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
「じゃ、僕用事あるから」
「え、ちょっと……!」
女の言葉を無視して、僕はその場を離れた。
恵が缶に口をつける、その直前。
二人の間に何食わぬ顔で割って入る。
「お待たせー」
「あれ、レモンティー? 恵にしては可愛いモン飲んでるじゃん」
「これは、ので……」
「そうなの? 、一口もらうよー」
の返事を待たずに、恵の手から缶を奪い取る。
恵が飲むはずだったそれに、口をつけた。
「ん、甘くて美味いね」
缶を口元から離して、の方を見る。
目が合った瞬間、の顔が一気に赤くなった。
ほら。
さっきまで恵に向いていた視線が、簡単に僕へ戻ってくる。
恵とのやり取りなんて、全部忘れたみたいに。
……なんで僕、こんな大人げないことしたんだっけ。
まあいいや。
が僕の顔を見て、わかりやすく動揺している。
その反応が見たかっただけ。
そういうことにしておこう。
車へ向かう時も。
の背中に手を添えて、恵の方を振り返った。
『だめだよ、恵。手を出しちゃ』
そう教えるように、口元だけで笑って見せる。
勘のいい恵のことだ。
わざとやったの、バレたかな。
恵がのことを、ただの同級生とは違う目で見ているのは知っている。
でも、は僕のことばっかり見ているから。
そんなこと全く気付いていないけど。
かわいそうにね、恵。
ホテルのエントランスを抜けると、ちょうど車が滑り込んできた。
ドアを開け、後部座席に乗り込む。