第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
電話をしていると、以前暇つぶしに呼んだ女が偶然目の前に現れた。
「悟、久しぶり。最近全然連絡くれないから……」
「あー……ちょっと忙しくてさ」
名前、なんだっけ。
まあいいか。
生徒の前だし、適当にあしらって早く終わらせよ。
そう思った時、背中に視線を感じた。
振り返らなくても、誰かわかる。
だ。
適当に相槌しながら、ちらっと横目で様子を見る。
はこちらをじっと見て固まっていた。
それが面白くて、女が僕の腕にすがってくるのも振り払わなかった。
女はそれを勘違いしたのか、僕の頬に唇を寄せてくる。
普段ならそんなこと絶対させないけど。
その時の僕はあえて女の好きにさせてやった。
だって、それを見たが――。
どんな顔をするのか、見たかったから。
案の定、はスマホをぎゅっと握りしめて、泣きそうな顔になった。
ほんと単純で可愛い。
あんな顔はあんまりさせたくないけど。
その目が僕から離れないことに、満足している自分がいた。
でも、ちょっと意地悪しすぎたかな。
後で頭でも撫でて、慰めてあげよっかな。
そう軽く考えていた。
けれど、恵がに声をかけた。
何を話しているのかは聞こえない。
でも、恵が不器用にもの気を逸らそうとしているのはわかった。
の泣きそうだった顔が、少しずつ緩んでいく。
面白くない。
が笑ってるのはいい。
でも、僕以外のやつの言葉で笑うのは、違う。
さらに恵は、が飲んだレモンティーの缶を受け取った。
かすかに顔を赤くして戸惑いながらも、口をつけようとしている。
間接キスなんて、気にすることでもない。
中学生じゃないんだから。
そう思ったのに。
気づいた時には、もう足が動いていた。