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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**


……え?
その声は……先生?
どうして、先生がここに?


すぐ上にいる伏黒くんを見ると、彼も目を見開いている。
私と同じように、何が起きているのかわからない顔をしていた。


甘く痺れていた頭の中が、一気に冷水を浴びたように冷えていく。
心臓がさっきとは違う意味で、ばくばくと大きな音を立てていた。



「おーい、開けてよ。二人とも起きてるよね」



あ、開けた方がいいのかな。
どうしよう。
どうしよう。
今、こんな格好で。
私、伏黒くんとさっきまで……。


暗闇の中で、伏黒くんと視線が合った。
いつもならすぐに状況を判断する伏黒くんが、今だけは何を言えばいいのかわからないみたいに、唇を引き結んでいる。



「ねえ、聞こえてるー? 寝たふりしても無駄だよー」

「開けてくれないと、さすがに僕ちょっと寂しいんだけど?」



先生が扉の向こうで、騒いでいる。
なのに、私たちは返事ができなかった。
その沈黙が、余計にまずいものみたいに膨らんでいく。



「……ねえ」



急に、先生の声の温度が変わった。






「見えてるよ」



その一言で。
私と伏黒くんは、弾かれたようにバッと身体を離した。


見えてるって、どういう意味?
いや。
先生の目なら、部屋の中だって見えていてもおかしくない。

私たちがどれくらい近かったかも。
伏黒くんが私に触れていたことも。


全部……?


頭の中が真っ白になっていると、伏黒くんの手が私の髪に触れた。
耳の横に落ちていた髪を後ろへ流されて、心臓が跳ねてしまう。


こんな状況なのに。
先生が扉の向こうにいるのに。
伏黒くんの指先は、いつもと同じくらい優しかった。



「……俺が出る」



伏黒くんは私の浴衣を一瞬だけ見て、それから低い声で言った。



「は……その格好、なんとかしろ」

「ぇ……」



言われて自分の身体を見下ろす。


ほどけかけた帯。
だらしなく開いた胸元。
太ももまでめくれ上がった裾。


(な、なんて格好……!?)


一気に顔から火が出そうになる。
でも、待って。
伏黒くん、暗くて見えないって……。


(さっき、やっぱり見えてたのっ!?)


文句を言いたかったけど、今はそれどころじゃない。
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