第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**
すぐ近くで、またスマホが震え出した。
でも、伏黒くんは画面をちらっと見ただけで、スマホを裏返して畳に放る。
電話……。
ぼんやりとした頭で、それだけを思った。
もう、誰からの着信なのか気にする余裕すらない。
首筋に伏黒くんの唇が触れた。
鎖骨へ向かって、熱い息と唇がゆっくり降りていく。
考えなきゃいけないことが、まだあったはずなのに。
電話のことも。
先生のことも。
全部、伏黒くんの唇に触れられるたび、遠くなっていった。
「んっ、ぁ……ひゃっ、」
ちゅぅっと肌を強く吸い上げられて、 ちくっとした痛みが走る。
電話が鳴っている間、同じ場所をしつこく吸われた。
「……」
荒い息を吐きながら、伏黒くんが顔を上げる。
すぐ上にある伏黒くんの目と視線が絡む。
こんな泣きそうな目をした伏黒くんは初めてだった。
「……好きだ」
「が好きだ。……俺だけを見ろ」
そう言って、伏黒くんはまた唇を寄せた。
強引に塞がれるでもない。
奪われるでもない。
触れて、離れて。
また触れて。
何度も、何度も。
私の気持ちを確かめるみたいに唇を啄まれた。
「んっ……ふし、ぐろくん……」
膝のあたりで乱れていた浴衣の隙間から、伏黒くんの手が入り込んでくる。
「ぁっ……、」
太ももに触れた指先が、ゆっくり上へ滑っていく。
近づいてくる。
誰にも触れられたことのない場所に。
そこは……。
そこまで触られたら、もう本当に――。
初めてのキスも、えっちなことも。
もし叶うなら、先生と――。
そんな夢をどこかで見ていた。
それなのに今、私に触れているのは伏黒くんで。
私の身体はその手に反応してしまっている。
もっと触れられたらどうなるんだろう。
そんなことが、一瞬だけ頭をよぎる。
私、このまま伏黒くんと……?
「……っ、まっ――」
待って、と言おうとした。
けれど、その言葉が最後まで声になる前に――。
「恵ー、ー」
扉の向こうから聞こえたその声に、私と伏黒くんは同時に固まった。