第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**
「……ぇ……?」
思わず、間の抜けた声が出てしまった。
好き?
伏黒くんが……私を?
「こんなことして、悪いと思ってる」
「お前が、五条先生のこと好きなのも知ってる」
まさか。
知られていたの?
隠していたつもりだった。
ずっと、誰にも言わないようにしていたのに。
いつから。
どこから。
伏黒くんが気づいていたなら。
もしかして、先生にも――。
「今は、それでもいい」
「俺のことも……考えて欲しい」
考えて欲しい。
その言葉が、すぐには飲み込めなかった。
だって、伏黒くんは同級生で。
大切な仲間で。
友達で。
いつも隣にいてくれて。
呆れながらも、困った時はいつも助けてくれて……。
その伏黒くんが、私を好きだと言っている。
私が先生を好きなことまで知っていて。
それでも、考えて欲しいと言っている。
「ぁ、……えっと」
何か言わなきゃ。
そう思うのに、言葉がうまく出てこない。
ありがとう?
ごめんなさい?
ううん、違う。
そんな簡単な言葉で終わらせちゃだめだ。
伏黒くんの告白を、ちゃんと受け止めたい。
でも、どう言えばいいのかわからなくて。
焦れば焦るほど、頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
伏黒くんは、何も言わずに待っていた。
ただ、私の言葉を待っている。
私は、浴衣の袖をきゅっと握りしめた。
うまく言えなくてもいい。
まずは、今いちばん最初に浮かんだ気持ちから伝えよう。
「す、好きって言ってくれたこと……嬉しかった、です」
「……なんで敬語」
「あ……っ」
こんな時に恥ずかしい。
でも、伏黒くんがほんの少しだけ表情を緩めた気がした。
いつもの伏黒くんだ。
よかった。