第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**
落ちたスマホの光に照らされた、泣きそうな顔。
雷に怯え、俺を怒らせてしまったという焦りで揺れる瞳。
五条先生に向けるような、どうしようもなく惹かれている顔じゃなくても。
それでも――今この瞬間だけは、俺だけを見ている。
ただそれだけで、押し込めていた感情が黒く熱を持っていく。
頭の中で、何かが切れる音が聞こえた。
俺はを突き放すために伸ばしたその手で。
その背中を強く抱き寄せていた。
「え……ふしぐろ、くん……?」
その戸惑う声を、俺は無視した。
強引に体勢を反転させ、を布団の上に押し倒す。
俺が、上。
が、下。
すぐ目の前で、が目を丸くしている。
何が起きたのかまだ理解していないようだった。
その不安そうな顔を見て、ようやく自分のやっていることに気づく。
(……俺は、何をして)
離れろ。
これ以上、こいつを怯えさせるな。
頭の隅で、冷静な自分が警告している。
「悪い……」
から離れようとした、その時だった。
畳の上に転がった俺のスマホが震える。
暗い部屋の中で、画面だけが白く光った。
『五条先生』
その名前が、嫌でも目に入った。
「……っ」
も、その表示に気づいたらしい。
「で、出た方が……もしかして先生、心配してるかも……」
雷に怯えて。
俺の下で動けないまま。
それでも最初に出てくるのは、あの人のことなのか。
その一言で、戻りかけていた理性がまた黒く塗り潰された。
「……五条先生なんか、やめろ」