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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**






窓の外は、まだ雨の音が響いていた。


テレビからは、地方のバラエティ番組が流れている。
は座って、画面を見ながら可笑しそうに笑っていた。
さっき俺が離すなと言った、その布団の上で。


俺は壁にもたれながら、その横顔をぼんやりと見ていた。


そばに置いてあった、スマホが震える。
画面を見ると、補助監督からだった。



『雨が止む明日の朝、お迎えにあがります。ご宿泊されている旅館の場所を教えてください』



位置情報を添付して、『了解しました。よろしくお願いします』 と簡単に返信を済ませる。



「ふふっ……なにこれ、面白いね」



そのやわらかい声に顔を上げると、が膝を抱えて笑っていた。
浴衣の裾が少し乱れて、白い足首が覗いている。


また余計なことを考えそうになって、逃げるように視線を手元のスマホに戻した。
意味もなく開いたはずのメッセージアプリで、連絡先をスクロールする。
そして、その名前の上で指が止まった。



『五条先生』



俺は画面をタップして、文字を打ち始めた。



『任務帰りに電車が止まり、本日は高専に戻れません』

『近くの旅館で一泊します。部屋が一つしか空いていなかったため、と同室です』



ただの担任への報告。
事実しか書いていない。
でも、これを読めば、あの人が俺たちの状況を想像できないわけがない。


迷うことなく、送信ボタンを押していた。


既読はすぐにはつかない。
それでいい。

五条先生に知らせたかった。
は今、俺の隣にいると。
あんたが曖昧な距離で囲っているの隣に、今夜は俺がいる。


こんなやり方が、子供じみてることくらいわかっている。
それでも、このメッセージを取り消す気にはなれなかった。



「伏黒くん、お茶飲む?」



振り返ったが、急須を持ち上げてこっちを見る。



「……ああ。もらう」



スマホの画面を伏せて、畳に置いた。
まるで、自分の内側で渦巻く真っ黒なものを隠すように。
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