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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**


「……なんで、離してないんだよ」

「え?」

「普通、もう少し隙間空けるだろ」

「でも、部屋狭いし……離してもそんなに距離変わらないよ」

「あるだろ。狭くても限界まで壁に寄せるとか」



つい言い方がきつくなった。
が、浴衣の袖をきゅっと掴む。
叱られたみたいに眉を下げて目を伏せた。



「……そんなに、嫌だった?」

「そうじゃ――」

「気づかなくてごめんね。伏黒くん、狭いと寝にくいよね……」



そうじゃなくて。
この距離で、無防備に眠るお前の隣で。
俺が何も思わないと本気で信じ切っている、その無神経さが腹立たしいんだ。
必死に冷やしたはずの頭が、また急激に熱を持っていく。



「……私のお布団、壁際に――」



が布団の端へ手を伸ばす。
けれど、俺は気づけばその手を掴んでいた。



「……伏黒くん?」



が目を丸くしてこっちを見る。



「いい。このままで」

「でも、さっき……」

「いいって言ってるだろ」



いいわけない。
この距離で眠れるわけがない。
隣にがいるとわかっていて、何も考えずにいられる自信なんてない。


それでも、ここで離されたら。
何か決定的なものまで、俺の手から遠ざけられるような気がした。


自分で言ったくせに、引き止めるなんて。
完全に矛盾している。


(俺は、どうしたいんだ……)


頭と感情がちぐはぐで、自分でもどうしていいかわからない。


ふと、まだの手を掴んだままだと気づいた。



「……わ、悪い」



パッとその手を離すと、は小さく首を振る。



「ううん。大丈夫」



はそれ以上は何も言わず、座卓の上に置かれていたリモコンへ手を伸ばした。



「あ、テレビつけてもいい?」

「……好きにしろ」

「うん」



テレビがつくと、部屋に場違いなくらい明るい声が流れ始めた。
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